『模倣の殺意』(中町信)
中町信の『模倣の殺意』を読んだ。
坂井正夫という作家が服毒死する。自殺ということで処理されたのだが、動機が分からない。坂井正夫と交際のあった中田秋子が坂井正夫の過去を調べていく。また、坂井正夫と交流のあった作家でルポライターの津久見伸助も坂井正夫について調べていくのだが・・・。
発表されたのが40年以上前の古典的な作品だが、まったく古臭さを感じさせない名作。見事な構成と巧いミスリードでしっかりと騙された。これは面白いねぇ、読んでおかないともったいない作品だ。
以下ネタバレなので未読の方は読まない方がいいです。
この作品のポイントは、中田秋子の追う坂井正夫と津久見伸助の追う坂井正夫が同姓同名の別人であること、この2人の坂井正夫が同じ小説を書いていること、そして中田秋子と津久見伸助が坂井正夫を追う時間軸が違うこと。作者はこれらを明らかにせず、あくまでミスリードを狙って淡々と語っていく。よくまとまっていて面白いよねぇ。読み応えのある作品だ。
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