『明日の記憶』(荻原浩)
荻原浩の『明日の記憶』を読んだ。若年性アルツハイマーを患った男を描いた山本周五郎賞受賞作。
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明日の記憶 (光文社文庫) 著者:荻原 浩 |
広告代理店で営業部長の主人公は50歳で若年性アルツハイマーと診断される。忘れ去るものが徐々に多くなり、ついには愛する娘や妻の顔までも・・・。
この作品の特徴は、若年性アルツハイマー患者の主人公の一人称で描かれること。実際の同病患者がそこまで冷静に自分を分析できるのかどうかは知らないが、徐々に薄くなっていく記憶を主人公自身が語るのは哀しみを誘う。それでも読後感はさわやか。主人公が家族の愛に包まれているからだろう。
物語のクライマックスでは主人公とやはり痴呆の老人との掛け合いがある。苦笑せずにはいられない場面だが、重いテーマに笑いを入れるのは作者の上手いところ。年齢的にはわたしも無関係とは言えないだけに考えさせられる作品だ。おかげで荻原浩にどっぷりはまってしまった。
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